アパートから入居者さんを問題なく立ち退いてもらうために行う方法


アパートやマンションの建て替えのために、入居者に退去してもらう正当事由とするために考慮すべき事柄があります。

まずは交渉期間ですが、交渉期間は十分に取る必要があります。

なかには解体の1年前から始めるべしと言われる方もおられます。

このてん借地借家法27条では解約は6カ月前に申し入れるということになっていますので、少なくとも6カ月前のは交渉を始める必要があるでしょう。

筆者のある知人は文化住宅に住んでいましたが、アパートオーナーの経営破綻により、突然アパート解体の話がもちこまれ、しかも半年どころか3カ月ほどの猶予期間しかなかったようです。

ほぼ満室状態のアパートでしたが、高齢者が多く、この話に異議を唱えるだけの気力のある入居者もおらず、みな期限までに退去されたようです。

しかし冷静の考えてみると、この場合の扱いは借地借家法に抵触している可能性がありますし、弱い立場の入居者が多いことにつけこまれたようにも思われます。

アパートオーナーの視点からすると、これで良かったのかもしれませんが、しかし法令順守の視点からは問題のある進め方です。

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アパート解体の6カ月前には入居者と交渉を始めなければならない。

ところでもう1つ大切な事柄があります。

交渉が進むにつれて建て替えのさいの明け渡しに関して入居者と合意したとします。

合意したならば、そのことをきちんと書面にしておきましょう。

例えば明け渡しは○月○日までに、立退料あるいは引っ越し代金は○○円、○月に支払う等です。

そして署名と捺印を双方で行います。

そうすると入居者の気が変って、あくまでも居座ろうとすることを防ぐことができますし、万が一裁判になっても書面による合意事項があれば、家主側が有利になります。

ただしお金の支払いは前払いにしないほうが賢明です。

明け渡しが確認できた時に支払うほうが無難でしょう。

というのも前払いで支払ったものの、なかなか明け渡そうとせずに居座られてしまう可能性があるからです。

ところで交渉のもう1つのポイントは、交渉しやすい入居者から進めていくという方法です。

そうすると交渉が難航する入居者が最後に残りますが、周りが明け渡しでいなくなると、明け渡しに応ぜざるをえないプレッシャーとなることでしょう。

いずれにしても建て替えのための入居者との交渉には時間と労力、そしてお金がかかります。

よく準備して計画的に行っていきましょう。

追記:建て替え交渉のさいの話し方、接し方も重要です。

そのてんについては以下の記事をご覧ください。

基本的な事の進め方は、いつでもどこでもあまり変わらないものですが、どのように入居者にそのことを切り出すかも大切な事柄です。

入居者も感情がありますから、同じことを言われても言い方次第で受け止め方も違ってくる場合があるからです。

では切り出し方の1つ目ですが

ソフトに話を始めるというてんです。

家主と入居者の関係は上司と部下のような関係ではありません。

どちらかといえば対等な関係ですが、借地借家法によるならば、どちらかといえば入居者のほうが有利な関係になるのかもしれません。

ですから高圧的な態度で接することは避けたいものです。

また高圧的な態度で接して入居者の反感を買ってしまうならば、ますます明け渡しに応じなくなり、かえって厄介な事になってしまうこともあるでしょう。

しかも十分な正当な事由がなければ、裁判沙汰になっても勝てるという保証はありません。

ですから高圧的な態度でなくソフトに話を始めるでありたいものです。

そういったことが苦手と感じているならば、ソフトに話を始めることのできる奥様に話を切り出してもらうこともできるでしょう。

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明け渡しの交渉のさいには、高圧的な話し方でなくソフトな話し方をする。

次に話の内容ですが、建て替えの理由をはっきりと述べることです。

例えば建物の老朽化が進み、住むのも危険になっているということや、行政からも改善命令が出ていることなどを、わかりやすく明快に説明します。

通常はこの段階で入居者の多くが、建て替えに理解を示してくれることでしょう。

しかし入居者にしてみれば、これから先のことが心配になることでししょう。

特に長年、入居してくださった高齢者などには大変なプレッシャー、ストレスとなります。

そこで入居者の幾らかの不安解消のためにも立退きの条件を提示します。

例えば立退料の提示か引越し代金の支払いを提示すること。

代替アパートの手配や、引越し先の紹介。

一定期間の家賃の免除などを提示し、入居者の明け渡しを後押しします。

このように退去していく入居者の身になって話を進めていくことができます。

借地借家法 – Wikipedia