
建て替えによる明け渡しを正当事由にすることも可能。
先回のブログでは、アパートの老朽化あるいは消防法に問題がある理由でのアパートの建て替えは十分な正当事由にならない場合があることについて書きました。
もちろん多くの場合、アパートがかなり老朽化していて住むのも危険なので退去してくださいと、アパートのオーナーか不動産管理会社から言われると、大概はすなおに応じるものです。
私も過去にそのような経験がありますが、阪神大震災で住んでいたアパートが半壊判定を受けて、もう修繕しないので退去してほしいと大家さんから言われたことがあります。
すなおに応じましたが。
しかし今から考えてみると、当時は半壊判定での建物解体は自治体が費用を負担してくれることになっていたので、大家さんもその機会を活用して解体そして新しい賃貸住宅を建てたようです。
さらに私の知人は古いアパートに住んでいましたが、アパートオーナーさんが破産し、それと同時に建物の建て替えのために、すぐに退去してほしいとの求めがありました。
見た感じまだまだ使用できそうなアパートで、ほぼ満室状態でしたが、住民のほとんどは抵抗せずに退去していったようです。
今から考えてみると、明け渡しの法的な正当事由にあたるかどうか疑わしい事例だと思います。

ほとんどの入居者さんは、建て替えのための明け渡しに応じるものだが・・。
ではどうすれば建て替えを十分な正当事由にすることができるのでしょうか。
そのためには老朽化と建築基準法や消防法の改善命令が下されているといった理由に加えて立退料を支払う必要があります。
この立退料、引越し代に置き換えることができるのかもしれませんが、引越しにかかる費用の負担を行います。
このてんは多くの場合に常識的に行われていることだと思われます。
それに加えて、代替え家屋か引越し先の世話も行う必要もあることでしょう。
特に高齢者や、独り身の男性にとって、次の引越し先を見つけるのは容易でない場合があります。
しかし誠意をもってそうしてあげることもできるでしょう。
とりわけ建物の老朽化ということになると、長年、住んでこられた高齢者も少なくないことでしょう。
これらの入居者たちの建物解体後の世話を十分に行ってあげたいものです。
このように建て替えによる明け渡し要求が正当事由となるためには、様々な要素があることがわかります。
もし自物件を建て替えるならば、1つ1つの要件をクリアしていく必要があるでしょう。
追伸:アパートオーナーにとってアパートの建て替えは大きなイベントであり、大きな決断が求められるものです。
なかにはアパート建て替えの決断ができないまま、ズルズルと築古な木造アパートが存続しているケースも多くあります。
もちろんそのようなアパートでも、そこそこの入居率を維持し、住人から慕われているようなアパートであればそれで良いのかもしれませんが。
ところで空室が目立つようになった、家賃もかなり下がった、アパート経営も赤字続きとなると、建て替えの決断を下す時なのかもしれません。
しかしそのためには現入居者に明け渡しを求めなければなりません。
そのためには正当事由が必要になるわけですが、この正当事由、けっこうハードルが高く、万が一裁判になってもアパートオーナー側が裁判で明け渡しが決まると思っていても、十分な正当事由ではないと判断されれてしまうこともあるのです。
ではどうすればよいのでしょうか。
ここで有効になってくるのが借家契約の特約です。
この特約に「建て替えのさいの明け渡し要請に応じる」といった文言があるならば、かなり有効なものとなります。
もし近い将来、建て替えを検討しているならば借家契約の特約にそのような文言を入れておきましょう。

定期借家契約によって明け渡しをスムーズに行うことができる。
さらに近い将来に建て替えをするのが、ほぼ決まっているならば、定期借家契約にすることも、スムーズに明け渡しをしてもらうのに有効です。
例えば2年、3年、5年といった具合に定期借家契約し、契約期間終了後、速やかに退去してもらうことができます。
ところで定期借家契約でない場合は正当事由を示して明け渡しを求めるしかありません。
つまりはまずは入居者に合意してもらう必要があります。
そのためには、建て替えについて説明し、話し合う必要があるでしょう。
こうした幾らか、やっかいな事柄を物件の管理会社の担当者が行ってくださる事柄も多いとは思いますが、アパートオーナーが入居者宅を訪問して説明や話し合いを行うこともあります。
私も若いころアパート暮らしをしていた時に、建て替えの話がもちあがったさい、そのための明け渡しについて、アパートオーナーと奥さんが入居者宅を訪問してこられて説明していかれたのを覚えています。
そのさいにはどのように話をすればよいのでしょうか。
そのてんについては次回取り上げたいと思います。
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